ある日お前は、お手伝いさんが眼を話した僅かなすきにサクラを連れて散歩に行ったんだ。
車の多く通る道の右側をサクラと歩いていた時、前方から車が暴走してきたんだ。
この場所は見渡しが悪く、事故が多発していることから、私はお前には決してひとりで散歩に行ってはいけないと言っていたんだが。
車がお前にぶつかる瞬間サクラはお前をかばって、お前を1メートル下の田んぼに突き落とした。
「ドスーン」という鈍い音がしたと目撃者が後で証言している。
お前たちに車が当たり、田んぼの中に転げ落ちたのを見た人たちが急いで駆け寄ってきてみた光景は、
と言いながら親父は目頭を抑えた。
血まみれのサクラがお前をかばうようにかぶさっていた光景だったそうだ。
暫くしてお前は、
「お母さん!お母さんが死んでしまう!お母さん!」
と泣きなから血まみれのサクラを抱きしめていたそうだ。
お前が「お母さんが!」と言って泣き叫んでいることから、駆けつけた人たちは、お母さんが車に跳ね飛ばされたと思い周囲を探したが、お母さんの姿はなかったと、駆けつけた私に話してくれた。
私は、「隆!大丈夫か?」とお前の所に駆けつけたときには、お前は血まみれのサクラを抱きしめて、
「お母さんが!お母さんが!死んでしまう」
「お父さん早く助けて」と泣き叫んでいた。
その時サクラは苦しい息の下、血まみれのお前の顔をなめながら、
「クゥ-ン、クゥ-ン、クゥ-ン」
と三回鳴き動かなくなった。
まるで、
「隆、大丈夫?」
と言っているようだった。
サクラは、お前に車が当たるのをいち早く察知して、自分を犠牲にして、
「隆!お前を助けたんだ!」
「お前は奇跡的にわずかの擦り傷しかおってなかった」
「お前に着いていた血液は、すべてサクラの物だったんだ」
「サクラはお前をかばった結果、まともに車にぶつけられて死んだんだ」
親父は、眼から大粒の涙をこぼしながら嗚咽した。
「サクラが、私をかばって死んだ!」
「交通事故で私をかばって死んだのは、お母さんではなくサクラだったのか!!」
「隆!アルパムの次を見て!」
私は父親に言われ、アルバムをめくった。
そこには新聞の切り抜きがはられていた。
その見出しには、
『忠犬!小さな主人かばって、哀れ死す!』
と記載されていた。
記事には先ほど父親が離してくれた内容が詳細に記され、生前の凛々しいサクラの写真が載っていた。
続く
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