お母さんが出かけてから、私はお父さんにもらったボールで遊びながら過ごしました。
『お父さんが居ないから、つまらない』
『お父さん早く帰ってきて、遊びましょうょ!』
何度も何度も玄関の所へ行き、耳をそばだててお父さんの帰ってくる音を聞きますが、帰ってくる気配はいっこうにありません。
私は、ボール遊びをやめ、リビングに差し込む暖かい日差しの中で寝そべり、いつしか眠ってしまいました。
「ミワ!ミワ!」
どこからかお父さんが私を呼ぶ声が聞こえてきました。
私は起きあがり声のする方を見ました。
するといつもお父さんが座る所にお父さんが居るではありませんか。
『お父さん!いつ帰ってきたのですか?私分からなかったです』
私はお父さんに問いかけました。
するとお父さんは悲しそうな顔をして、
「ミワ!約束を果たせずごめんよ」
『お父さん、何を言っているのですか、お父さんは帰ってきてるではありませんか!』
『ワン、ワン、ワン』
私は喜び勇んで、お父さんの胸の中に飛び込みました。
私がお父さんの胸の中に飛び込むと同時に、お父さんの姿は忽然と消えてしまいました。
『お父さん!お父さん!どこに行ったのですか?』
私はお父さんの姿を探し回りましたが、お父さんの姿はどこにもありません。
『お父さん!お父さん!』
その時玄関の開く音が聞こえました。
続く
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